ラインローラーのはなし2

内径3ミリの小さなベアリングを入れる理由はベールアームやプロテクティングワッシャーの大きさからせいぜいこんな物だろうと思いました。実際、ベールアームの幅は9ミリですからプロテクティングワッシャーはそれ以下でなければならず、更にその内径は小さくなくてはなりません。更にその中に入るローラーは小さくなり、ベアリングはもっと小さい物を使わなければならないと。そして選ばれた物は内径3ミリで外径6ミリです。
シャフトを3ミリに削る為に専用の刃物を造りました。加工は割合上手くいき、ベアリングの入るスペースを確保出来ました。そしてローラーの中にベアリングは収まり上手くいったかに見えたのですが、駄目でした。ベアリングの内輪をナットで締め付けてしまい回転性能に支障をきたしたのですね。小さなベアリングですから簡単に歪んでしまいます。完全にフリーで回さないと駄目です。20年越しの恋に破れた気分でした。やはり無理なのかと思いました。思い切ってベールのシャフトを削ったのに物にならないとは。落胆していたのです。治具まで造ってこの有り様。旋盤を手に入れても駄目な物は駄目。一番の弱点を残してフルチューンも無いと思いました。もう辞めよう。そんな事を考えていました。
今思えば絶妙なタイミングでチューニングの依頼がありました。ファーストモデルを前に正直びびりました。切りたくない。削りたくない。ばらしたベールを手にあれこれ考えてみました。ノギスを当てて測ってみても同じで、解決されません。依頼品を置き、自分のカーディナルを手にとり、先にこれを直そう。そう思い、削ったシャフトを復元しようとしました。真鍮のカラーをはめて太くしようと考えたのです。しかし、内径3ミリのパイプは外径が4ミリです。削らなければなりません。うん?4ミリ?これに合うベアリングの外径は?7ミリ!ローラーの外径は?プロテクティングワッシャーの内径は?行けるんじゃないのか?
幾つか試作してみました。プロテクティングワッシャーのテーパー角度を緩くとりローラーとのクリアランスを確保します。原型はこの時、出来上がりました。