ラインローラーのはなし3

 直ぐに加工できる環境にあったからでしょうか、簡単なことになかなか気づかず、シャフトを細くすることばかり考え、太くすることに気づくまでに要した時間と手間は相当なものでした。
 先ずはステンレスからローラーを削り出しました。オークションに出品すると、まずまずの反応を戴きました。ステンレスでも回転性能は何ら現在の64チタンに劣るものではなく、不満は無かったのです。回転バランスは元のまま、高速で回すとぶれます。しかし実際にはそこまで高速回転することは稀ですから、気になりませんでした。その他の部分でもバランスを取ることは出来る訳ですし、ラインローラーの仕事はステンレスでも十分果たせる訳です。難しい仕事をして、単価を上げるよりはこのまま無難な仕事をこなす道を選び、そして進んでいたのです。
 あるお客様から完璧だとの褒め言葉を戴きました。生来、へそが曲がっているのでしょう。本当に完璧なのか?セルテートのハンドルを回してみました。ぶれないのです。全くぶれません。可愛げが無いくらい、ぶれない。構造的に敵わない部分も有るのですがこの差は・・・・・・めらっと燃えましたね。ステンレスの半分の比重のチタンを使えば良い事はステンレスを使うときから知っていました。出し惜しみをした訳では無く、手を抜いた訳でもありません。念のため。
 あちこち調べて回れば回る程、難削材。そう書いてありました。孔を空けることさえ難しいそうです。中でも64チタンは大変だと書いてありました。敢えて入っていく所ではないと思っていたのですが・・・・・
 とりあえず、純チタンから。手持ちの旋盤用バイトもステンレス用ですから、少しは切れるだろうと思いながらの挑戦です。少しは切れました。直ぐに切れなくなります。ポイントはバイト自体と切削オイルと後は、まあ、要するに腕なんでしょうね。困った時には永尾研究所です。メールを送り、返ってくるまでの時間が長く感じました。有る。流石です。早速送ってもらい切る。切れるのですが、熱が凄い。いくらなんでもこれでは・・・・もたない気がする。財布が。切削オイルの方が安くあがるので、これでもか、というほど掛けます。流すといった方が表現としては合っています。オイルだらけになりながら切れば熱はオイルと共に流れて行きます。切れた。
 純チタンの次は64チタンですが、これもあるお客様からの一声、ソルトで溝が入った。塩がみから回転が悪くなり溝が入りました。
 一応はあちこち調べて回ります。難削材。相手にとって不足なし。実はまだまだ上があるそうです。難儀したのは加工より何より、入手出来ない。難削材ですからちょうどのサイズが欲しい訳です。8mmちょうど。僕の求めるものは小さ過ぎたようです。10mmまでは有るのですが8mmとなるとなかなか見つかりません。やっと見つけた。OFAというところですがとりあえずメールでお伺い。返信。だめもとですので何を書かれても平気。意外にも親切な事を書いてくれていたのに感動しました。即購入しました。届いた荷物を開けて見るのですが純チタンと見分けは付かないですね。見分け方は削る以外に無いのではないでしょうか。
 旋盤にセットして削ります。ウイーン、シュー、キー、オイルぼたぼた、シュー、キー、ぼたぼた、シュー、ぼた、シュー、ぼたたた。こんな感じで、オイルだらけです。